游ゴシック体のディレクターである字游工房代表鳥海修に質問しています。
游ゴシック体制作におけるディレクターの役割をおしえてください
游ゴシック体のプランニング、コンセプトの設定およびデザインの統括です。
デザインの統括について具体的に挙げると、漢字については書体見本の設計と全漢字のイメージの統一です。かなについてはデザインを担当しました。従属欧文については相談役といったところです。
游ゴシック体のコンセプトをわかりやすく教えてください
ひとことでいえば普通のゴシック体です。字游工房はベーシック書体を重視していますので明朝体やゴシック体は必須アイテムです。ところが今まで明朝体はありましたがゴシック体はありませんでした。片手落ちですね。したがってゴシック体をつくることは急務でした。
つくるとなれば游明朝体と一緒に使えるように、游明朝体のコンセプトを踏襲するのが順当です。游明朝体が印刷を前提にした長文を組む普通の明朝体を標榜したように、それに合うゴシック体として漢字に対して小さめで、ふところの締まったかなを充てました。
つまり最近はやりのふところの広いゴシックではなく、むかしからある普通のゴシック体を標榜したのです。
游ゴシック体のエレメントの一部をまるくしたのはどういう意図があるんでしょうか?
游ゴシック体は高精細な印刷で使われることを前提としました。高精細なデジタル環境下での文字出力は原字に対してきわめて忠実に再現されます。それは時として起筆や終筆の先端がとても鋭くなり、金属活字や写植文字に慣れ親しんだ私たちにはやや硬質で、刺激が強く映ります。長い時間見ていると疲れるんですね。
ですから游ゴシック体では、 弊社の游築見出し明朝体にならって角をやや丸くすることによって、目に馴染むようにと考えたのですが、どうでしょうか。
游ゴシック体のかなのデザインについて意図したことがあればおしえてください。むずかしかったことはありますか?
かなは游明朝体をベースに開発しました。
制作方法としては、はじめは游明朝体のかなを下に置いてゴシック体を書いていったと記憶してます。ただ明朝体の骨格のままでゴシック体にするというのは、等線で描く関係上、狭いアキはどんどん狭くなり、私としては普通の形ではなくなってしまうのですよ。で、開けるでしょ。そうすると文字がだんだん四角くなってしまいます。それだと面白くないですから、今度は游明朝体の骨格を壊すように、しかし違和感のないようにつくる。
結果として、游明朝体と重ねれば相当ずれているのですが、総体としてはファミリーに見える、このあたりがむずかしいといえばむずかしい。でも一番むずかしいのは自分のデザインしたかなを客観的に見れないということかもしれませんね。
游ゴシック体はどんな場面でつかってほしいですか?
今回のLとHはともに見出し用と考えています。曲線が多くて癒し系の書体だとおもいます。静かに長く使ってもらえればうれしいです。
特にLは縦画の起筆やハライの先端に拡大しないとわからないような細かい処理が施されいるので、Lを大きく使ったものを見てみたいですね。それから全く反対ですがLの本文も見てみたい。だれか使ってくれないかな。明るいというか、白い紙面になるはず。でも勇気いるだろうな。