字游工房について

 

有限会社字游工房は、1989年に株式会社写研を退社した有志で立ち上げました。初代代表の鈴木勉は、写研で「スーボ」「スーシャ」「ゴーシャ」のオリジナル書体をはじめ、「本蘭明朝体」「ゴナ」の各ファミリー、「秀英初号明朝」など、写研を代表する書体制作で中心的な役割を果たしました。字游工房設立後は、大日本スクリーン製造株式会社(現在は株式会社スクリーン)からの請負いとして、鈴木勉主導のもと「ヒラギノ明朝体」「ヒラギノ角ゴシック体」「ヒラギノ丸ゴシック体」「ヒラギノ行書体」の各ファミリーを開発しました。後年、その一部がAppleコンピュータの標準フォントとして採用されるなどの幸運を得ましたが、1998年、「游明朝体」の開発途中で病に倒れ49歳の若さで他界しました。その後は鳥海修が代表を務め、自社書体の「游明朝体」「游ゴシック体」「游教科書体」の各ファミリーの他、「文游明朝体」「游築見出し明朝体」、さらに仮名書体の「36ポ」「五号」「初号かな」「初号ゴシックかな」「文麗」「蒼穹」「勇壮」「古雅」「水面」「朝靄」などの制作に努めました。このうち、「游明朝体」「游ゴシック体」の一部のウエイトはWindowsの標準書体に採用されました。また他社からの請負いで「こぶりなゴシック」「秀英体ファミリー」「凸版文久ファミリー」など、主に基本書体の制作に参加させてもらいました。その他、ブラザー工業株式会社、シヤチハタ株式会社の書体づくりにも協力させてもらいました。
2019年にモリサワグループとなり、石本馨代表のもと、「史仙堂楷書体」を制作。その後、邦文写植100年の記念行事として、写研書体のOTF化プロジェクトがモリサワ協力のもと進行中で、その中で字游工房は「石井明朝体」「石井ゴシック体」「石井丸ゴシック体」「本蘭明朝体」「本蘭ゴシック体」の各ファミリーの改刻作業と監修を担当しています。
字游工房は設立以来、読むための書体である基本書体の開発に注力してきました。誰にとっても読みやすく美しい書体は、文字(言葉)を介して思想信条を伝える点で、情報インフラの根幹であり文化の礎と考えます。基本書体としての明朝体やゴシック体がいつまでも続くとは考えず、その時代やデバイスの発展によってデザインも変化すると考えます。しかしいつの場合でも読みやすく美しい書体づくりという考えは不動のものと思います。モリサワグループの一員になってもこの考え方は変わるものでなく、むしろモリサワと一体になり、それを会社全体で共有することで日本の文字文化発展に寄与できたらと思います。

これまでの歩み

1989年(平成元年)

鈴木勉、鳥海修、片田啓一の3名で渋谷区恵比寿に会社設立

1990年(平成2年)

新宿区高田馬場に事務所を移転

1991年(平成3年)

書体制作のツールとしてパーソナル・コンピュータを導入

1993年(平成5年)

ヒラギノ明朝体ファミリーを大日本スクリーン製造株式会社が発売
ブラザー工業株式会社の桃花丸ゴシックを制作

1994年(平成6年)

ヒラギノ角ゴシック体ファミリーを大日本スクリーン製造株式会社が発売

1995年(平成7年)

株式会社キャノンの仮名書体(あしび、はしばみ、からたち、てっせん)を制作

1996年(平成8年)

ヒラギノ特太行書体を大日本スクリーン製造株式会社が発売
ダイナコムウェア株式会社の和文用仮名
(新宋体、痩金体、魏碑体、隷書体、麗雅宋)を制作

1997年(平成9年)

画面表示用明朝体制作に着手
JK明朝体制作に着手

1998年(平成10年)

5月6日 鈴木勉死去 鳥海修が代表取締役社長に就任
ヒラギノ明朝体 W2、ヒラギノ行書体、游築36ポ仮名、游築五号仮名を
大日本スクリーン製造株式会社が発売

1999年(平成11年)

『鈴木勉の本』発行

2000年(平成12年)

Apple 社が OS X にヒラギノ書体をバンドルすることを発表

2001年(平成13年)

ヒラギノ丸ゴシック体を大日本スクリーン製造株式会社が発売
こぶりなゴシック体 W1、こぶりなゴシック体 W3、こぶりなゴシック体 W6を制作

2002年(平成14年)

日本タイポグラフィ協会顕彰・第一回佐藤敬之輔賞の企業団体部門を受賞
游明朝体 R、游築初号ゴシックかな発売

2003年(平成15年)

游築見出し明朝体発売

2004年(平成16年)

游築初号かな、游教科書体 M、游勘亭流発売
サントリー株式会社、サントリーグループのコーポレートフォント
「サントリー明朝」を制作

2005年(平成17年)

游明朝体 Std L、游明朝体 Std M、游明朝体 Std D発売
シヤチハタ株式会社の自社書体開発支援

2006年(平成18年)

游明朝体五号かな L、游明朝体五号かな R、游明朝体五号かな M、
游明朝体五号かな D、游明朝体36ポかな L、游明朝体36ポかな R、
游明朝体36ポかな M、游明朝体36ポかな D発売
株式会社ダイテックのCAD用書体を開発・制作
東邦大学ロゴデザイン

2008年(平成20年)

游ゴシック体 Std L、游ゴシック体 Std H発売
東京TDC賞2008のタイプデザイン賞を受賞

2009年(平成21年)

游ゴシック体 Std M、游ゴシック体 Std B発売
株式会社キャップスの文麗仮名、蒼穹仮名を制作

2010年(平成22年)

游ゴシック体 Std R、游ゴシック体 Std D、游ゴシック体 Std E発売
大日本印刷株式会社の秀英明朝 L、秀英明朝 M、秀英明朝 B、
秀英丸ゴシック L、秀英丸ゴシック Bを改刻
株式会社キャップスの流麗仮名、文勇仮名を制作

2011年(平成23年)

游ゴシック体初号かな L、游ゴシック体初号かな R、游ゴシック体初号かな M、
游ゴシック体初号かな D、游ゴシック体初号かな B、游ゴシック体初号かな E、
游ゴシック体初号かな H、游明朝体 Pr6 R発売

2012年(平成24年)

游明朝体 Pr6 M、游明朝体 Pr6 D発売

2013年(平成25年)

游ゴシック体 Pr6 L、游ゴシック体 Pr6 R、游ゴシック体 Pr6 M、
游ゴシック体 Pr6 D、游ゴシック体 Pr6 B、游教科書体 N M、游教科書体 N Bを発売
株式会社ジャストシステムの一太郎2014パックに游書体ライブラリーから10書体が搭載
株式会社インフォシティの電子書籍ビューアに游ゴシック体 Mが搭載
株式会社イーブックジャパンの電子書籍リーダーに游明朝体 M、游ゴシック体 Mが搭載

2014年(平成26年)

凸版印刷株式会社の凸版文久明朝 R、凸版文久ゴシック Rを制作
サントリー株式会社の清涼飲料ロゴデザイン

2015年(平成27年)

凸版印刷株式会社の凸版文久見出し明朝 EB、凸版文久見出しゴシック EBを制作
大日本印刷株式会社の秀英アンチック、秀英四号かな、秀英四号太かなを制作
サントリー株式会社の清涼飲料ロゴデザイン

2016年(平成28年)

游明朝体 Pr6N L、游明朝体 StdN E、游明朝体36ポかな E、
游ゴシック体 StdN E、游ゴシック体 StdN H、游明朝体五号かな 第二版、
游明朝体36ポかな 第二版、游ゴシック体初号かな 第二版を発売
株式会社ユナイテッドアローズのコーポレート欧文フォントを制作
凸版印刷株式会社の凸版文久ゴシック DBを制作
順理庵ロゴデザイン
東京都写真美術館ロゴタイプデザイン

2017年(平成29年)

游明朝体 StdN B、游明朝体36ポかな Bを発売
文部科学省の小学校外国語・外国語活動平成30年度使用新教材で使用される欧文フォントHandwritingWeCanを制作
サントリー株式会社の清涼飲料ロゴデザイン

2019年(平成31年)

3月に全株式を株式会社モリサワに売却し、モリサワのグループ会社となる
游教科書体 New M、游教科書体 New B、
JKHandwriting Light、JKHandwriting Regular、JKHandwriting Medium、
JKHandwriting Bold、JKHandwriting Heavy、JKHandwriting Medium Italic、
JKHandwriting RL Light、JKHandwriting RL TW Lightを発売
サントリー株式会社の清涼飲料ロゴデザイン

2020年(令和2年)

MORISAWA PASSPORT、TypeSquareに游書体ライブラリーの提供を開始
サントリー株式会社の清涼飲料ロゴデザイン

2021年(令和3年)

文游明朝体 StdN R、文游明朝体 文麗かな StdN R、文游明朝体 蒼穹かな StdN R、文游明朝体 勇壮かな StdN R、文游明朝体S 垂水かな StdN RをMORISAWA PASSPORT、TypeSquareに提供

2022年(令和4年)

文游明朝体 古雅かな StdN R、文游明朝体S 水面かな StdN R、文游明朝体S 朝靄かな StdN Rを発売
グループ会社の株式会社モリサワが字游工房との写研書体の共同開発を発表

2023年(令和5年)

史仙堂楷書体 StdN Bを発売
新宿区下宮比町に事務所を移転

2024年(令和6年)

株式会社モリサワおよび株式会社写研との共同制作による、石井明朝、石井明朝オールドスタイルかな、石井ゴシックの改刻フォントがMorisawa Fontsよりリリース

2025年(令和7年)

11月1日、株式会社モリサワに吸収合併

*文中に記載されている会社名、製品名は各社の登録商標または商標です。